※上映中の作品の内容に一部言及しています。
・『劇場版 少女歌劇レビュースタァライト』
ふたかおレビューがかなり性が横溢していた。清水の階段を点々と照らしていたスポットが、二人を追い詰めるように上へ上へと消えていくのが好きだ。
真矢クロは「今のあんたが一番かわいいわよ」(おそらく「泣いた顔もかわいいですよ」の意趣返し)に「(激昂したままで)私はいつだったかわいい!」で返す時点から既に好きだったんだけど、「天堂真矢」を容れるためだけのものだった数多の額縁が、最後の最後で他者の崇高な美しさを真矢に刻みつけるフレームに変わったの、本当の本当に西条クロディーヌが掴んだ勝利という感があって泣いてしまった。(後から考えると「かわいい」-「美しい」軸の話でもあった)
終盤、かれひか曲がジーザスクライストスーパースターだった瞬間から前後の記憶がぱあんっと弾けて、ただひかりの躍る黒髪と清々しい笑顔だけが印象に残っている…。嘘みたいに突き抜けた晴天に舞い上がる上着、ハイスクールミュージカルの卒業式で一斉に空に投げ捨てられる学帽みたいだ。
・神奈川芸術劇場『虹む街』
・神奈川芸術劇場『未練の幽霊と怪物』
・東京バレエ団『カルメン』『スプリング・アンド・フォール』(東京文化会館)
初・東京文化会館かつ、おそらく初・劇場でのバレエ鑑賞だった。
東京文化会館大ホール、座席の色づかいと側壁の丸っこいタイルみたいな感じがカワイイなーと一目惚れしていたんだけど、実際暗転するとその側壁がぼうっと暗闇に浮かび上がってドキドキする。
天井に近い階だったので、オーケストラピットや天井の反響板?の向こうがそーっと覗けるし、側壁の厚みとかも確認できてしまうし、かなりの良席だった。
『スプリング・アンド・フォール』:ドヴォルザーク「弦楽セレナーデ」に沿った作品で、階下からこんこんと湧き上がってくるオーケストラが印象的だった。特に第2楽章の影をつけるようなコントラバスとか、音の情報が客席までクリアに受け渡されるようだ。
『カルメン』:私は今までオペラ版しか知らなかったので、踵を上げた差し足で舞台に立つカルメンを観て、好きなキャラクターが違うメディアミックスで登場した時のような感動をしてしまった。
あと個人的に新鮮だったのがホセ周りで、自分は今まで正味ホセがよく分からなかったんだけど、上官によって矯正されていた身体をカルメンという自由な人間に解放され、徐々にカルメンに対して開かれていく本作のホセはとても魅力的だった。出会った当初は上半身下半身をちぐはぐに動かして戸惑いを示していた人間が、曲も終盤になると、相手を支えている最中に首に頭埋めて振りほどかれるのを繰り返すな。
・RAISE A SUILEN『 ZEPP TOUR 2021 BE LIGHT』(Zepp Namba/配信)
OUTSIDER RODEOはますき曲というイメージが強いんだけど、最後一回〆た後にますきが大暴れして全員ドラムセットに寄り集まる時、音いじりながら嬉しそうにますきを見守るチュチュの横顔が印象に残っている。DJタイム、青いネイルを塗った手でチュチュレイヤの声を延々と裁断していくチュチュも好き。
UNSTOPPABLEの歌いだしはキーボードのみを伴って歌い上げるアレンジだった。
書き終わりに墨が掠れた筆跡のようにところどころ空気を含む切々とした歌声が止み、客席に静かに呼びかける瞬間、顔が照明の影となりマイクに添えられた手だけが白く浮かび上がって、しかし強い目がそこで眼差してることが画面越しにも明らかだった。