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了 / 観たものについて書く。公共劇場が好き。

9月・10月に観た映画(『ベイビーわるきゅーれ』『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『最強殺し屋伝説国岡:完全版』

※映画の内容に一部詳細に言及しています。

※作品内の暴力表現に言及している箇所があります。

 

・『ベイビーわるきゅーれ』

 鶯谷殺し屋同棲映画。序盤のまひろが小走りに横断歩道を駆けていくカットで、日常的な範疇の動きからもフィジカル強者であることが伝わってくるのが強い。

 ちさとのマシンガン連射のシーン、一番キメててもおかしくないところを、そこまで溜めもせず、むしろまひろとのじゃれつきの助走として挿入されてるの、映画全体の空気感がそのアクションに集約されるようだった。まひろの「お疲れ」の言い方、なんか聞き覚えあるな…?と思っていたけど、一時期SNSでバズッていたやつだ。

 

・『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

 私は007を熱心に追いかけている人間ではないけれど、今までに観た(数少ない)映画の中でもスカイフォールは印象的な作品である。「世代交代」をし損なった人間の、それでもやっていくしかないという覚悟…を何回も反芻してきたので、本作はけっこう感慨深かった。

 アクションはキューバが一番好き。さざめく群集が知らずのうちに不気味な人壁に変わっているのが好きだし、すわ追い詰められたかと思いきや、パニックが中心(主人公)周りではなく全然周縁から始まってるのも好き。研修上がりの「新卒」で、緊張で酒の進みが早い、一見大丈夫かな?と思う人間が、いざ戦闘が始まると他を寄せない強さなのも、痛快というか鮮烈というか。

 生体兵器周りのふわっとした顛末の処理はやや物足りなかった。「民族浄化」に使われうることを作中で示唆された技術を、主人公サイドの組織が開発していたのは、描くならきっちり描ききるしかなくない?

 

・『最強殺し屋伝説国岡:完全版』

 殺し屋ドキュメンタリー。序盤の、服にどの靴合わすかで時間取るくだり、実在感の輪郭がくっきりとしていた。

 繁忙期の仕事のうち、他に回したり怠ったりした業務に限って取引先に怠りがバレ、その尻拭い仕事で更にミスして全てがグズグズに崩れていく…流れ、お腹が痛くなる嫌なリアリティがあった。

 最強ボディガードとの戦いにおいて、相手を強敵と見た国岡が、撮影者に「僕についてきて良かったですね/良いの撮れますよ」と声かける場面が作中でいちばんカッコイイ国岡なんだけど、観客はこの場面までに彼が現状に対するままならなさや不平不満を抱えていることを知っていて、その上で何もなかったかのようにカッコよく振舞うのが、ある種澄ました空気があって余計に好きだ。

 このシーンはアクションの内容も良かったけど(相手をフェンスに寄せて連撃するとき、相手の体が崩れ落ちそうになるたびにいったん止めて体の位置を直すの、攻撃なんだからそりゃそうなんだけど動作としてちょっと面白い)、バチバチやりあってる背後に生協車が映ったときは「大学でこれを…?」になった。