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観たものの話をしている

埼玉県立近代美術館「MOMASコレクション第4期」「扉は開いているか:美術館とコレクション1982ー2022」

 埼玉県美行ったことないの流石にワックだな...くらいのモチベーションで行ったんだけど、ここ最近で一番興奮した展示だった。

◼️MOMASコレクション第4期
 まずコレクション展を見た。三室構成でコンパクトだがぎゅっと詰まった展示だ。
 第一室は「自然」をテーマに、モネやシャガールといった近美的ないわゆる名品から、シュルレアリスムスーパーリアリズムまで、ボタニカルという一点によって連関した作品群が一堂に会する。
 今日において、収蔵品を制作時代や主義潮流ではなく、あるテーマに沿って横断的に展示するのはさして特殊なことではない。
 しかし、この後の企画展で展示されていた雑誌『新建築』内の本間館長(1983年当時)の発言からは、開館当時からまさにこの第一室のような展示手法に意識的に取り組んできたことが窺え、熱かった。

 第二室「たなごころの絵画」では、掌の中でしげしげと鑑賞するような小品を特集している。版画作品、特に小型のものって、今までそこまで食指が動くことがなかったが、様々な作家のそればかり集められると、確かに標本箱やミニチュアの玩具を眺めるのにも似た興趣が発生していた。
 別の宇宙を精緻に剥離してきたかのような日和崎尊夫、静物の乾いたニュアンスを紙に載せる山本容子、それこそ標本めいた網目を紙に落とした宮脇愛子が好きだった。

 第三室は「ダンス、ダンス、ダンス」と銘打ち、フランスで活動し舞踏に関心を注いだ画家・末松正樹の作品を特集している。
 第二次世界大戦期、フランスで敵性外国人として拘留された末松は、絵の中で踊ることを希求しながら、ダンスをモチーフとしたデッサンを繰り返したという。
 この、近年作家遺族から寄贈されたというデッサンが、第三室では迫力ある点数をもって展示されている。画群の中でダンサーたちの足は林のように立ち並び、腕の動きはまるで舞台の幕のひだのようにも見えてくる。
 コレクション展全体を通して、寄贈・寄託作品の割合がかなり高いのも特色かもしれない。長短どちらからでも語れることではあるが...。

◼️扉は開いているか
 開館40周年記念展。
 郷土作家をはじめとする作品の収集やリサーチ、そして時宜に応じた企画展の開催という、県立美術館としての営みの蓄積を見せる章「美術館の織糸」が素晴らしかった。
 展覧会当時の新聞記事やフライヤーなどの史料展示も絶妙で、例えば新聞評を読んで高松次郎《布の弛み》まで足を戻したり、展覧会「日本の70年代」(2012年)のフライヤーがアングラ演劇のアートワークオマージュでテンション上がったりしていた。
 展示の最終章では現代のアーティストとの共同制作について取り上げている。佐藤時啓、ハコを総括する展覧会において佐藤の作品は禁止カードにも近いというか、作品が惹き起こす情動が強すぎるため、回廊での展示はよいところに落ち着けた感がある。