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了/観たものについて書く。

東京都美術館「都美セレクション グループ展2022」

東京都美術館「都美セレクショングループ展2022」

 公募から選ばれた若手グループ展3本の恒例展示。

 グループ展単位だと「ものののこしかた」がよかった。福島県郷土史家・古川利意氏の記念美術館設立に向けた取り組みを契機とした展示というリード文と、「アーカイブ」をテーマにしているという事前情報からは想像していた内容の斜め上を行く、多様で不思議な形状をしたアプローチによる作品が、薄暗い印象のギャラリーBに息づいている。

展示室入り口付近からずらりと並んだ、新井毬子≪あわい≫は、正直初見「何?」だったんだけど(自己弁護すると、薄暗い展示室に幼子の頭部を模した土器ばかり一列にずらりと並んでるのを見て、全くそう思わないのは難しいと思う)、触ってよい作品ということで、手前の一つにそっと触れてみると、指のはらあたりが土器特有のざらつきに緊張するのが分かって、後を追うようにその造形の妙(、たとえば小さな唇や瞼、まるい頬、)への愛おしさがぐっと増していく。作家は、本作品をハンズオンにした理由を「作者がはじめて土器に触れた時の感覚」を鑑賞者が追体験する形で残せるように、としている。コロナ禍を経て、参加型展示として取り入れやすい様式から、安易に導入しにくい様式に変わってしまったハンズオン展示だけど、その骨の太い使い方を久々に体験させられてかなりLOVEだった。

 居村浩平≪ものづくりのかたち≫はヘッドホン着用形式の映像作品で、ぱっと見の雰囲気から「伝統工芸の作り手に取材しているのかな?」と当てをつけてヘッドホンを着ける。地域の焼き物業に携わる作り手が技法の伝承を語る声、その手わざ、そのうちに鑑賞者はある違和感に気づくことになる。

 ほか、菅野歩美≪未踏のツアー≫は、説明者じしんも訪れたことがない(どころか作中説明によれば伝承の形のままでは現存していないはずの)土地の物語を、抽象的なポリゴンの上を滑り、時にポリゴンの内側に沈みながらガイドされる作品。

 辻絵梨子≪沼田薬品工業株式会社≫は、「この展示物や配布物をなんの説明もなくSNSに上げたとしたら、とんでもないことになるのだろうな…」とふと想像して怖くなった。

 

 「絵画」を中心に据えた「眼差しに熱がこぼれる」では、丸山直文≪morpogen≫と高橋大輔≪km≫が印象的だった。≪morpogen≫は毛穴や肌の刺し痕を連想させるような無数の点が描かれており、支持体である綿布の質感も相まってきわめて生理的な印象を受ける。丸山氏の絵画のいくつかは壁掛けではなくイーゼルに載せて展示されており、裏側の木枠から絵画を覗くことができるようになっていたが、作家によるとこれは中西夏之氏が試行した同手法を再考するためだという(展示室内配布物)。

 絵の具が画面いっぱいに塗りたくられ時に点てられ、所々うっかりしたらそのまま剥離しそうなほど絵の具が隆起した≪km≫は、観ていると「今、絵画の前に立っているな」という実感が得られる作品だった。私が油絵具厚塗り好きなだけかもしれない。

 

 「たえて日本画のなかりせねば」は、「東京美術学校(現在の東京藝術大学)」「上野」あたりが自分の認識が浅いせいでそこまでクリティカルに受け取れず(普通に悔しかった)、「富士山」モチーフの取り扱いが自分との接地面となった。

 それにしても、都美のギャラリーA~Cって、行くたび結構ピーキ―なところ使ってない?!と思うんだけど、展示している側の実感ではどうなんだろう。

 

去年

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