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了 / 公共劇場が好き

2024年6月ー7月/補遺

◼️林立騎(2023)「舞台芸術と社会:価値、フェアネス、プロセス」

 ロームシアター京都のリサーチプログラム報告書がオンラインで閲覧できることに気づいてちまちま読んでいるのだが、とりわけ感銘を受けたのが22年度報告書収録の上記論考である。

rohmtheatrekyoto.jp

 那覇芸術文化劇場に所属する筆者が2023年の東京芸術祭で行った講義の再録だが、今日の(少なくとも紙ベースの)公共劇場論ではあまり指摘されてこなかった、しかし実際的でコアい論点が出揃っている。もし林の文章にもっと早く...例えば2020年の劇場に対する不信のムードの中で...出会っていたら、その後の自分はもっと違う場所に辿り着いていたかもしれない、とさえ想像する。

  どうでもいいが、芸能とは異なる生業に就労する方々が地域芸能の場で活躍している様子が好きで、先日も居住地の祭りにお囃子目当てで立ち寄ったのだが、その途中で不意に、この趣好って本論考内で引かれているルソーの「劇場は共同体を破壊する害悪」論と表裏でちょっとグロじゃんねと思いを馳せた。

 

◼️アクアパーク品川に行った。

 水族館は生体展示とスペクタクルの距離の近さにビビって少なからず緊張する(ましてやアクアパーク品川だ)のだけれど、漫画『やがて君になる』(仲谷鳰)に登場したあの水族館だと知って肩の力が抜けた。

 漫画にも登場するトンネル状の水槽の中、頭上をのぺーっと通過していく大きなノコギリザメやエイの裏側。水を弾きながらぐんぐん泳ぐ海獣やペンギンども。同行した友人が楽しみにしていた爬虫類やカピバラのゾーンが展示の突き当たりまで来ても見当たらなかった時、さーっと血の気が引いた。奥まった順路を見落としていただけだった。

 

◼️「UNTOLD vol.15」(渋谷Another Dimension)

 夕べりの渋谷はさるすべりの花が咲いていた。動画の中によく見ていた、コンクリと木で切り分けられているように見えるフロアは本当に切り分けられていたのだと知る。その境界線、ギリコンクリ寄りに立ってドッタドッタ床を踏んだ。演者ごと徐々に色を変える、微に入って集中力を切らさせないイベントで楽しかった。「Friendly Fire」(FAIZ)が掛かって嬉しい。

 

◼️銚子に行った。

 JR成田駅から成田線を伝って往く。成田駅久住駅あたりは水田の一部をハスの畑に転用していて、移動している時間には白い花が点々と咲く様子が見られた。

 銚子駅を一歩出ると、駅の正面から川に向かうゆるやかな坂に沿って、幅の広い街路が下っていた。市街地には洋品店が多い。しょうみ着いてから予定がことごとくガタついて盛り下がっていたのだが(目的駅のネーミングライツが某社で萎えたのもある)、意外と足で稼げる土地の規模感が快くて復調する。

 君ヶ浜を辿る。犬吠埼下は、水がたゆたったような侵食痕をそのまま残した岩が転がっていて、内側の砂浜へとグラデーションを成している。赤い海藻を巻き上げた波が浜へと打ちつける。到達してから長く伸びる波を避けきれずに足元を濡らし、海岸公園の熱く灼けた階段で靴を乾かしてから帰った。

 

◼️CLAMP展(国立新美術館)に行った。

 まんがを描く素養がまるでないため、せっかくの原画を前にしても名場面プレイバック的な視点しか持てないのが残念だが、とはいえ楽しかった。

 本編の原画については、テーマに沿った場面を抽出している作品、ストーリーラインやエピソードをほぼそのまま追いかける作品、など各作品まちまちなのだが、個人的な印象では『聖伝』の乾闥婆王と蘇摩の場面を点数出していた。あな天(「貴方がいない天界で生きていてもしようがないもの」)は間違いない名台詞だが、画業35年の漫画家の全作品を概観した上での選定となるとキュレーションの過程が気になる(『CLAMP学園』の藤の精の回にも思った。どちらも好きなエピソードだからか)。