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FESTA松本2022

長野県松本市で開催された舞台芸術イベント「FESTA松本」の感想。今年こそアホみたいに演劇に淫するぞと思っていたがそうはならなかった。旅程が下手すぎる。

 

「バッタの夕食会」(信毎メディアガーデン)

豪華客船タイクツニック号、怪盗と探偵、犬の国ブルドキア、互いが互いが追っていると聞きつけた男たち...。しょうもない言葉遊び、挿話に次ぐ挿話の連続。

「風邪になった男」、シンプルな一人語りなのに、挿話の中でも異様に引き込まれた。明るく穏やかに突き放されるような破滅の気配というか...。

阿呆のおっかあ(下地尚子氏)、児童合唱団の指導者に必ずいそうな...と思ったがどうなんでしょうね。カモメ、足腰が強い柔らかい飛び方のカモメから、もうすこし滑空寄りニュアンスのカモメまで揃っていて、出てくる度ちょっと嬉しかった。

 

「火曜日はスーパーへ」(まつもと市民芸術館シアターパーク)

近藤隼氏の一人芝居。

シアターパーク(ホワイエ?ロビー?的な空間)の一隅を四角く囲った黒い幕、中は裏腹に真っ白で、プロジェクターと蛍光灯(?)で色水のような光が投影されている。

独居の父のもとを、週一回生活の世話のために訪れる女性の物語。文意が分からなくなりそうな箇所以外は、極力主語が抜かれた台詞。繰り返されてきたいくつもの日のエピソードを、一日の同じ時間軸(同じ行為)の上に照射する語り方が、それらが唐突に途切れた日のあっけなさを際立って思い起こさせる。当事者による上演版も観たいな。

 

「パフォーミングアーツ・セレクション」(まつもと市民芸術館実験劇場)

 横浜DaBYで創作されたダンス作品から選ばれた二本を上演。現在全国巡演中。

 実験劇場は主ホールの舞台上(後舞台)に設置される仮設の劇場で、通常の舞台正面の真裏が上演空間・客席となる。MPAC、正面性を揺らがせながら広い舞台面を利用するという一点においては、間違いなくトップでヘキの劇場ではある。

〈瀕死の白鳥、その死の真相〉

最初に登場するのは、あの有名な「瀕死の白鳥」だ。バレリーナと聞けば誰もが想像する真っ白な衣装、ぱっくり開いた背中からバキバキの筋肉が窺える。舞台上に美しく倒れこみ、拍手を浴びる白鳥。その生を終えたはずの白鳥が、舞台袖から出てきたテクニカルスタッフに、ピンマイクのケーブルをあの背筋を貫くように(舞台上で!)付けられている様子を、困惑しながら見守るところから本題が始まる。

 白鳥は、「瀕死の白鳥」を今度はセクションごとに細切れに踊りながら、自らが死に至るまでの経緯を喋り始める。岡田利規演出の「喋りながら踊る」作品と言えば記憶に新しいわたナラだが、あちらに特徴的だった不安感が「その死の真相」に漂わないのは、観客が一度踊りの型を刷り込まれているからか、あるいは死因を確信した白鳥の、自信に満ちた口ぶりゆえか。

〈When will we ever learn?〉(鈴木竜振付)

舞台上には4人のダンサーがいる。ダンサーたちは、同じひとつらなりの振り付けを、入れ替わりながら、音楽を変えながら、そして(客席に向けた)角度を変えながら、何度も繰り返す。どことなく暴力や交歓の気配のする振付、しかしそのポジションは交替が可能であり、常に転倒し続けていくような心地がする。

 

 去年楽しみにしていた(が実現しなかった)松本演劇祭との同時開催が今年は無かったの残念だったかもしれない。会場仕込みの都合とか生じるだろうから外野が言うことでもないけど。

 

あと、ずっと憧れてた大町山岳博物館(長野県大町市)にも行った。ニホンライチョウの飼育展示で有名な同館だが、二階奥にある同館のライチョウの飼育史をまとめた展示が充実感あった。1963年から同館が取り組みはじめたライチョウの飼育、繁殖は必ずしも順調ではなく、2004年には技術の未確立や市の財政状況を理由に事業を一度中断しているという。上手くいかなかった経緯も改善策も、一枚のパネルに直載にまとめられており、これだけでも行く価値がある。一階の登山文化史特集も面白い。海の行楽文化で相当する展示やってるとこってあるのかな...?

 

去年

 

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