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2023年12月/SPRAYFEST(clubasia)

 2021年設立のダンスミュージックレーベルSPRAYBOXによる初主催イベント。

 自分にとってSPRAYBOXは、はじめは今まで知らなかったジャンル音楽の魅力と猥雑かつポップな印象のアートワーク、現場で観てからはパフォーマティブでエネルギーに満ちたステージに惹かれ、加えて自分とタメや少し年下くらいの人たちが見通しをもってレーベルを運営し、実際成果を蓄積している様子が率直に言って眩しかったため、継続的にチェックしている存在であった。ので行った。

 

 clubasiaのメインフロアは相変わらずタッパがあり、頭上高くファンが回る気配が届く。その暗闇に多くの機材が息づく中、ステージ正面では3面のスクリーンが明るく浮かび上がっていた。That Fancy I・Shunji Fujiiー「Mind」のイントロが流れた途端、その全てが光の尾を流す高速道路やモノレールの映像に切り替わり、スムースな印象同士の合意が取れている...と思って愉快になった。

 andrew B2B Carpainter は他のTREKKIE TRAXの方も参加していて、MC入りしたなかむらみなみ氏がとにかくチャーミングだった。「Funky Beatz(NirBorna Remix)」掛かって嬉しい。

 1時を回ったくらいにラウンジに移動する。他の人に押されて飲み物を溢しそうになりマジでビビる。ラウンジはSPRAYBOXでリリース歴のある若手?の方が中心に出演していた。出番中の演者と客・他の演者が流動的に交流しており、自分はまったく関係ないのだがこちらの雰囲気も楽しかった。出演者情報が出たときは観たい人総覧できないの意味が分からないなとかナマ言ったりもしたが、それはそれとして回遊性の保障された空間は最高。

 

 3時ちょっと前くらいにメインフロアに戻る。UhーU!が橋渡しあたりで「UFO-mie」使っていた。そのままブースは英国から招聘されたSharda氏へと明け渡される。自分は2022年の来日公演を仕事で諦め、個人的には珍しいことにしばらく未練がましく思っていたから、冒頭「Sweetheart」のボーカルフレーズが幾度もいくども繰り返しフロアに降りそそぐうちに感極まってしまった。中盤に大好きな「I Want Your Soul」掛けてくれて大感謝だったのだけれど、曲に気づいて顔を上げると、ももいろの光の帯が演者の背後からフロアへと広がっていたのに加え、スクリーンには花びらの舞う映像が投影されており、さながら想像上の極楽めいた様相を呈していた。思いがけず(知らないところで告知されていたのかもしれないが)「New Connection」でボーカルのMEZZさんが登場し、大いに盛り上がる。こちらも現場を拝見するのがなかなか叶わなかった方なので嬉しかった。

 午前4時からSPRAYBOXが登壇する。本公演の特典として配布予定のVIPパックと11月発表のEP「THE RAVING SIMULATOR」の曲をそれぞれ軸に、ゲストボーカルやMCが入れ替わり立ち替わり登場する華やかなステージで、出番が終わった他の出演者や撮影スタッフまで含めると、もはや舞台上がもうひとつのフロアのような混み具合であった。誰かしら絶え間なくお立ち台に来て観客を煽ってくる。ブースにしなだれかかりながら歌うTORIENA氏の姿が、みんな骨抜きになってしまう...と怖くなるほど印象に残ったのと、昨年業務が辛くなるたびに聴いてはどうしてそんなこと言うの...と余計ども落ち込んでいた「IDWWMT」を生で聴けたのが熱かった。

 永遠にも続きそうに思われた時間はThat Fancy I氏渾身の「Mind」への切り替えで引き戻され、kyoー「How can I live」「(曲名不明)」とアンセムが続き、観客は歓声を上げると同時にこの幸福な交歓の終わりを予感する。最後にはふたたびの「New Connection」が掛かり、多幸感の余韻を残しながらもきちっとイベントは終了した。とはいえ帰りがたい客は僅かな時間ラウンジに居残っていた。

 帰りにきつねそばを食べた。おいしかった。