Ry

2023年12月/GOODNIGHT ANNIVERSARY Vol.23 (新大久保bacon)

 冬至のしんしんと冷えた夜だった。

 店内はどこもかしこも薄青く、イケメン通りに面した喫煙所への扉がしばしば開閉されるため、どんなにパフォーマンスが熱気を帯びたとしても冷涼であった。定期的に白いスモークが噴射され、前方の観客たちはあまい匂いの煙の中に埋もれていった。

 自分の眠気の度合いもあり、2時台~3時台くらい、Sentimental Hardware→リョウコ2000→illequal氏の一連がとりわけ記憶に残っている。

 Sentimental Hardwareは人間の二人組で、あらゆる暴れを片っ端から実践していた。演者のひとりはバットを振り回し、マイクを咥え、スピーカーに立ち向かう。一音一音置きにいくような音の隙間にすら興奮が引き攣る。演者もそれを取り囲む観客も目を爛々とさせたある種異様な光景が、持ち込み?の白い電灯に明滅してどこか夢のように映る。例えるなら出先で思いがけず餅を配られてホクホクするみたいに、これで年が越せる!と率直に思えるパフォーマンスだった。この人らも出番前は同じフロアにいて、そのエネルギーを潜めていたのだと考えると不思議だった。

 余韻冷めやらぬまま、フロアの床掃除も終わりきらぬまま間髪入れずリョウコ2000が滑降する。名曲cold pills、ラストクリスマスを筆頭に、アルバム「Unknown Things」に登場したニュートラルな印象の音を、より過激に色彩づけながら織り交ぜる。その流れを引き継ぐillequal氏で自分のギアがかちっと噛み合う心地がして、個人的に身体を揺らすのがいちばん楽しい時間だった。

 ブース真上にある大きなファンの奥にはミラーが貼られていて、DJの手元が見えるようになっていた。気づいたときは面白がって何度か見上げたが、なんか自らが羞知らずの窃視野郎のように思えて止めた。