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観たものの話をしている

3月補遺(Awich武道館、TCAA、MOTコレクション)

※展示中の作品内容、展示構成に一部詳細に言及しています。

・Awich「Welcome to the Queendom at 日本武道館」(日本武道館/Abema TV)
 個人史のようなライブ、というと的外れかもだけど、アーティストと客演者との多様な形での関わりが、曲のテーマゾーンごとに切り口を変えながら、しかしひとつづきの語りとして提示されるようなライブだった。
 「口に出して」のMC~アカペラ部の、静かに引き込まれる迫力はやはり印象的だった。コロナ禍における客席側の制限、個人的には窮屈な一方で助かった~!と思うこともあるんだけど、ステージにおける演者の絶対性の顕示という、あらかじめ同意されたある種のイメージプレイを結果的に補完している側面もあるよなと意識させられる。

東京都現代美術館
「Tokyo Contemporary Art Award 2020ー2022 受賞記念展」
 藤井光と山城知佳子の二者を取り上げている。
 藤井の作品は、第二次世界大戦後の日本における、アメリカ占領軍による戦争画収集を主題としている。戸惑いが先行するインスタレーションアメリカ占領軍の「日本の戦争画」の位置づけに対する苦慮の記録(これは保護すべき文化財なのか?廃棄すべきプロパガンダなのか?...)が、こんにち戦争画の展示を前にしたときの個人的な逡巡(当時の社会的文脈と切り離して、単純に美的なものとして鑑賞してよいのか?/すべきなのか?)とリンクする。
 山城の《チンビン・ウェスタン》は国立新美「話しているのは誰?」(2019)でも見たけど、西部劇ふうの酒場の場面、それぞれの異なる背景をもって同じ土地で生きる二人が、戯画化された役割を背負うまでしないと同席できないと暗に示されるようで、印象的な場面である。
 《肉屋の女》は三面画面を効果的に使っており、体得的に「わかる」感触、例えば水の中でふやけた精肉の質感、...が異なる意味を重ねながら突きつけられる作品である。

MOTコレクション 光みつる庭/途切れないささやき」
 一部前期展示を引き継ぎつつ再構成されている。序盤は大型めの絵画作品に入れ替わっており、良い作品を点数出してるのに自分の集中力が追いつかないまま目が滑ってしまって、混乱してしばらく展示室ぐるぐる回っていた...。あとで詳述するように、特に平面作品の質感のメリハリが効いている構成だった。
 展示室に入ってまず目に飛び込んでくる中西夏之《柔かに、還元》は、ぱっと見に藤棚のような華やかさがあって、第一室らしい作品だった。画面を構成する限られた色どうしが、互いの影にも光にもなって関わりあっていく様子が楽しい。
 石川順恵の作品は、大型の画面の上にフェルトのような質感が載っているのが面白い...と思ったら、水墨画の技法を参照したもので、画材的には砂らしい(キャプション参照)。
 桃源郷的山水を描いた三瀬夏之介《山ツツジを探して》は、鑑賞キョリだとちょっとコンクリート壁のような質感にも見える白墨の画面に、花に見立てたピンク色の斑点が散っているのが可愛い。
 この展示室、前期から引き続き展示されている康夏奈(吉田夏奈)の地形模型作品との形状的な対比となっており、主題の共通性、作品同士の同時代性もあって部屋単位の構成が良かった。
 三階は版画スタート。版画、美術館で鑑賞するジャンルとしては自分の中で比較的優先順位が低かったんだけど(作品の規模感とか複製性とかがしっくり来てなかったんだと思う)、今年に入ってからめちゃくちゃ面白くなってきた。
 すいかという「陽」っぽいモチーフに暗いかげりが差す浜口陽三《西瓜》、複数技法を使用することで同じ画面内の黒色にも異なる質感が生じている浜田知明作品が特に好き。