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了/観たものについて書く。

2020年に観たものから(現場編)

・clubasia『KEEP VENUE CONTINUE PARTY』(9月)

 入場制限をかけながらの開催だったので、自分みたいな元々通っていた訳ではない人間が行っていいのか…?とギリギリまで迷っていたけど、結果的にすごく良かった。

 まず感じたのが、クラブって音響はもちろんだけど、照明設備もやっぱり充実しているんだなー!ということで、特にDÉ DÉ MOUSEさんのステージ、my favorite swingがじんわりと流れ出すのと一緒に、黄色い光が滲むように空間を満たしていったのが素敵だった。DJの方々が想像以上にパフォーマティブというか、身体を自在に乗りこなしている印象だったのも、配信だけだったら気づかなかったかもしれない。

 もちろん順風とは言えない状況だろうけど、ハコ-アーティスト-客の相互関係性が一夜のうちに垣間見えて、(それはつまり私が劇場において一時的に見失ったものでもあったので、)最後の挨拶の時に感極まってしまった。ただそれは私が外野だから無責任に見出せることだとも今は思う。撤収!の掛け声とともに外出たら、明るくなった空が台風の合間特有の微妙な色合いをしていた。

 

Travis Japan『虎者 NINJAPAN 2020』(10月)

 初新橋演舞場かつ初Travis Japanの現場(空間を共有する催し)だった。

 開幕直後、まだ誰も出てきてない、どころか幕も上がり始めたばかりに感極まってしまった。というのも想像していたよりも新橋演舞場の奥行きがずっと深く漂ってきたからで、初めて訪れた劇場の奥行きが予想しづらいなんて普通なんだけど、今回ばかりは幕の向こう、舞台の上に豊かな空間が潜んでいるということ自体に揺さぶられていた。

 絆主義や家族観については思うところはあったものの、劇場の幸福にダイレクトに打ちのめされる時間だった。特に終幕、Together Nowを歌い上げてのまま美しく閉じるはずだった第四の壁を、演者であり登場人物たちが自ら押し留めてカーテンコールに応えた瞬間は足が震えた。

 個々のパフォーマンスについて、主題歌のNamidaの結晶は、6月のライブ配信の時に、間奏で矯めて矯めて一気に動くのちょうかっこいい!って思った覚えがあるのだけれど、今回舞台の逆サイドにいた敵と立ち回るように動いていたことが分かり、単体で観ていたパフォーマンスが物語内でどういう文脈や狙いを担っていたのか見えてきたので、曲から入ったミュージカルみたいで面白かった。大好きなVOLCANOが出演者全員のスペクタクルとして提示されたのも嬉しかった。

 

・浅草ロック座『STEPS ON BROADWAY 1st』(10月)

  全員良かった~!

円形ステージ好きなのはロック座の影響だと改めて感じた。換気のために開けられた天窓が開演時間迫るにつれてこきゅこきゅ音立てて填められるのエッチじゃん。

 一番印象的なのは1景で、最初のスクリーンの背後にうっすら演者たちの姿が透けて見えるところとか、バックシルエットの膨らんだ真っ白な衣装とか、景全体の美意識も好きだけど、やはりインパクトがあったのが高速エアリアルだった。あんなにも客席と舞台が近い劇場で、フリフリした白い日傘片手にぐいんぐいん上空を飛ぶところを披露されたら、もう目を丸くして見上げるしかない。2景はオレンジシャーベットみたいな色の衣装でまどろむくだりで「初めて好きな人と結ばれた夜」みたいなバックストーリーが想像されてキュンとした。

3景は舞台上で提示されたクィアネスが芯に響くようで、この公演を観てよかったな…と思った(制作者および演者の意図したものか分からないけど…)。膝立ちの状態で円ステージをぐるっと立ち回るの、あれどうやっているんだろう。3景のヒップホップダンスも良かったけど、7景の細かいパーツをバチバチに入れてくる、しかもハイヒールでのダンスもかっこよかった。

5景、映像パートで小賢しいけどこういう翻案好き!と思ったので負けてしまった。1曲目・2曲目の文脈から3曲目のセレクトの飛躍に吹き出しそうになったけど、その3曲目のブレイクの瞬間、真っ白な光がいきおいよく演者を照らす演出が良い。照明といえば6景も、衣装の裾?だったのか白い布をぱっと広げて、その上をひすい色の照明が滑っていくのが神秘的だった。6景・7景は元ネタ未見だけれど、場面作りがゴージャスで十二分に楽しめた。

 

・パソコン音楽クラブ『COM_PLEX』(11月/恵比寿ガーデンルーム)

 全員良かった~!(2回目) 

コンベンション主用途の会場なのかと勝手に予想してゆるく構えていたのに、開演したら照明設備バチバチで、目が焼けそうなくらい鮮やかだった。音の間が空いた隙に機材か会場かピシピシ震える音が聞こえたのも妙に記憶に残っている。双子のミラーボールもかわいかったけど、設備料金表には1個しか記載ないからガーデンホールから持ってきたのかな。

 良すぎたので翌日配信の方も買って、配信期間が終わるまでアドベントカレンダーみたいに毎晩少しずつ観ていた。hikariの光、真っ白な朝の照明をここまで取っておいたのズルじゃん!と会場でも思ったけど、映像だと配信終わりにパ音のお二人が朝靄の中へと消えていくように見えて、もっとズルじゃん!だった。

 

・『舞台「WITH by IdilTimePripara」』(12月/ZeppDiverCity)

 こまやかな芝居も含めてとても好きだったけど、冒頭の場だけは納得してなくて、男プリ(=プリパラ)を「不平等な現実からの逃避先としての“夢”」と見なすのって、(この世界からプリパラにアクセスしている、いわゆる)「俺ら」的な視点であって、どこの街にも半インフラ的にプリパラが存在している世界の社会人だったら、同じ内容にしてももっと違う見方になったんじゃないかと思う。なんか分かりやすさにおもねったように見えて嫌だった。

 最近、自分がいちばん忘却の作用に負けたくないものって照明の記憶なのかもしれない…という旨を考えるようになったが、今回の場合はオレーザービームのBメロ、ほっそいレーザーライトが3方向からいくすじも引かれる中で歌うアサヒだった。ひとつひとつの動きのとめ・はね・はらいをハッキリと丁寧に踊るアサヒ、普段好きになるタイプのダンスとは違うんだけど、すごく魅力的で大好きだ。

 光る構造物と暗い海に取り囲まれた夜のお台場、終演後駅まで歩く時間が楽しかった。